Contre-Courant 遡る

■日程(時間)
4月11日(金)~18日(木)11:00〜19:00
※ オープニングレセプション 4月12日(土) 17:00~20:00
■会場:新風館1F POPUP SPACE SPOT
■イベント内容
『Contre-Courant 遡る』
原点回帰の物語
○アーティスト コスティア・ホルナン・ドバンより
「私はウクライナで生まれ、ドネツク市にある孤児院で1年を過ごした後、フランス人のの両親との養子縁組によりフランスにきました。パリで育ちましたが、20歳になり、自分が生まれた国に戻りたい、自分の原点と繋がりたいという気持ちが次第に大きくなりました。しかし、2022年2月に起きたウクライナ紛争ですべては変わりました。いま、私は『逆流』を感じています。
自分のルーツを辿りたいと思った矢先、ウクライナから脱出してくる多くの命が自分の行方を妨げる障壁となったのです。これらの人々と出会い、彼らの物語を聞き、不安や恐怖を分かち合う事で、私は自分の原点を益々身近に感じました。私と同じように、彼らも、『流れに逆らっている』と。彼らは祖国に帰ることができない、あるいは、帰りたくないのです。このプロジェクトのタイトルは原点回帰の旅が必然性だと感じられる程強い感情であることを反映しています。この本は私が過ごしたウクライナの3つの町を写真ルポルタージュのように画像で巡る旅の物語です。ドンパスの東の果てに位置する私が生まれた町スニイネ、一年間を孤児院で過ごした町ドネツク、そして、フランスに向かった首都のキエフ、という3つの都市を巡る帰還の旅となっています。
写真は想像や空想の余地を十分に残しつつ、今という現実の瞬間を捉え、故に、誰もが自分だけの瞬間を創造出来ます。虚構と現実が織り成す世界。映像が空白を埋め、旅に誘い、また、疑問を投げかけます。このウクライナのレポルタージュに使用した全ての映像は、没入型ビューが可能なGoogle Earthの映像のスクリーンショットを元にしています。映像が捉えたものは静止しているようにみえます。レポターのように私は探索に没頭しました。まるで現地にいるかのように、私は馴染みのある通りを探し、自分に呼び掛けてくるもの、見覚えのある場所、捉えるべき場所、フレームに収めるべき場所、収集すべき手がかりを探し求めました。収集した映像を空想日記のように再解釈し、加工・編集しています。それぞれの映像は、私の生まれ故郷への旅、イニシエーションの旅となっています。この技法を取り入れたことで、私は、写真の概念に対する疑問を抱きました。その場所に居合わせシャッターを押すという行為なのでしょうか?あるいは、見る眼、フレーミング、写真を正当化する最終的な構成なのでしょうか?そこで私は写真集を補完する第2のオブジェとして、また、「嘘と真実」/「現実とフィクション」のコントラストを強調するため、写真ポートフォリオを制作することにしました。画像を更に加工し、東洋の写真へのオマージュとして白黒編集にし、写真を際立たせる特別なフレーミングのレイアウントを採用しました。それぞれの画像は昇華され、幻想を更に感受できないものにしようという試みも反映されています。
このプロジェクトは空想の旅とフィクション化された写真レポルタージュ、そして現実という交差点での宝探しのような様相を成しています。ウクライナの旅の現実の部分は、オレナ、ヴィクトリア、アナスタシアの3人のインタビューによって構成されています。この旅は、帰還ではなく制限に対するひとつの打開策であり、そして探求の旅路は今始まったばかりです。」
○ペニンゲン高等美術学校の展示会概要
ペニンゲン高等美術学校によるKostia Hornain Debainの展覧会『Contre-Courant 遡る』
Kostia Hornain Debainの展覧会『Contre-Courant 遡る』は、アーティストの生い立ちから生まれたプロジェクトであり、現実、虚構、記憶そして写真が私達の認識に与える 影響に対する問いかけを通して人間性というテーマを追求しています。制作に使用された画像は、これらの問いかけに答え、空白を埋めます。京都の姉妹都市であるキエフを舞台に、特異な登場人物との出会いと対話を通して提示される映像の旅は、制約に対するひとつの解決策のようでもあり、また、人間の本質である自己探求、他者との関わりを追求する旅の始まりも示唆しています。
○ペニンゲンと京都国際写真展の歩み
ペニンゲン校KG+に協賛
インテリアデザイン、コミュニケーション、アートディレクション学部を擁するペニンゲン校は、京都グラフィーのサテライトイベントであるKG+へ出展します。6度目の参加となる今年度、本校学長のジル・ポプリンは京都グラフィーとの9年間に及ぶ信頼関係を更に強化し、同校のメセナ活動の一環としてフェスティバルへの協賛を決めました。2024年の本校の卒業生であり、写真家・アートディレクターとして活躍するKostia Hornain Debainによる展覧会『Contre-Courant 遡る』の 開催は、新進気鋭の才能及び本校が育成する若手アーティストのキャリアにおける支援という本校の重要な役割を象徴するものです。また、KG+に教育機関としては唯一の参加となるペニンゲン校は、現代アートシーンにおける積極的かつ影響力のある役割を果たす真の後援者としての立場を確固たるものとしています。ペニンゲンは、感受性に満ち、普遍的なテーマを扱ったこのプロジェクトを、時代に即した質の高いアートとして共有し、旅路に送り出せることを誇りに思います。
○ペニンゲン高等美術学校概要
高等美術学校 Penninghen
1968年より、ペニンゲンは優れたアート・ディレクター、コミュニケーション・ディレター、インテリア・デザイナーを育成してきました。パリ中心地のサン ジェルマン・デ・プレに位置し、歴史と現代性に育まれた名高いアカデミー・ジ ュリアンの敷地内に校舎を構えるペニンゲンは、創造とそれを具現化する人々が社会の進化の中心であると考えています。学生それぞれのクリエイティブプロセスに寄り添い、プロフェッショナルかつ確立した起業家を育成するその教授法は定評を得ています。ペニンゲンのワークショップ精神は、フランス全土及び世界で活躍する3700名を超える卒業生のネットワークという強みとなっています。アカデミー・ジュリアンで学んだ偉大な前衛アーティストのように、継承され続けるペニンゲンの教授法は、クリエイティブに対するコミットメントの一例を成し、社会の技術的・概念的進化に関与し、創造的に影響を与える一助となっています。感性、実用性、才能、方法論を組合せており、クリエイティブの共有という視点から、直感、自己に対する自信、芸術的かつ技術的能力を伸ばすことが本校の強みとなっています。
■お問合せ
ペニンゲン高等美術学校